vol.21 PDF、完全データ、複製が混在する時代の編集業務の「ツボどころ」

2013/5/30


印刷通販ではお客様がデータをネット経由で印刷会社に送信し、印刷したものが返されるというシンプル商売となっています。価格はメニュー通り、品質の責任は、印刷に関しては印刷会社、色彩やテキスト内容(誤字脱字)はお客様という感じでしょうか。

印刷会社の仕事はそのような単純な仕事ばかりではありませんが、印刷通販のような仕事が増えていくと本来の編集業務の能力は目に見えて落ちてきますから、逆にそういうサービスの徹底は大きな差別化となります。

現代の印刷業ではPDF、完全データ、複製が混在して原稿が入ってくるケースが大変多いので、制作作業全体がお客様との分担というケースが意識されないままに進められています。

落とし穴が多いのは、一見簡単な仕事として捉えられがちな、「複製原稿」、すなわち手書きのものをスキャナーで読み取り、そのまま本文として使用する場合。こういうときは印刷物全体が複製ならまず問題は起こらないのですが、表紙はきれいに制作してほしい、目次は制作してほしいなど、部分的に制作するページがある場合、様々な問題が生じるケースがあります。

目次の原稿と複製する本文の内容が異なっている、表紙タイトルが本文と合っていない、背表紙の内容が表紙と同じではないなど、一見すると初歩的なミスなのですが、制作全体がお客様との分担作業になっている場合は意外にも最後まで発見されずに出来上がっているケースが多くみられます。

また、一部は自社でコピー機を使ってプリントアウトし、印刷会社が製本をまとめてする場合などは製本段階で初めてそれが支給されるケースもあるので、ノーチェックで仕上がりを迎えてしまいます。

印刷会社はいつでも全体に目を通す事が大切なのですが、短納期も究極まで来るとそんな時間を取る印刷会社は少なくなるのではないかと思われます。

印刷物とは、制作自体は短期間、短納期であっても、できあがってからが大変寿命の長い商品です。場合によっては何十年、あるいは100年以上も保存されるものかもしれません。

後悔の内容に「良い作品」として残していくために、常に全体に関わることを貫いてまいりたいと思います。